4%ルールとは? まだ取り崩していない私が考える、資産の出口戦略
「老後、貯めた資産って、どうやって使えばいいんだろう?」
「"4%ルール"って聞くけど、本当にそれで大丈夫なの?」
正直に言うと、貯めて増やすことばかり考えてきた私も、「使う側=取り崩す」という局面には、まだ立っていません。でも、だからこそ今のうちに考えておきたい。そもそもわが家のサイドFIREの目標額は、この4%ルールから決めたものです。投資歴約7年・40代の私が、出口戦略の代表格「4%ルール」とどう向き合おうとしているかを、正直に書きます。
増やす力シリーズの「応用・出口」ステップ、5本目です。
ここまで私は、「貯める→増やす」と歩いてきました。でも、お金を貯めて増やすことの、本当のゴールはどこにあるのでしょうか。それはきっと、いつか、そのお金を使って暮らすことです。
ところが不思議なもので、「どう増やすか」はあれこれ語られるのに、「どう使い終えるか」の話は、意外と置き去りにされがちです。今回は、その出口の話。
先にお断りしておくと、私はまだ取り崩しを始めていません。だからこれは体験談ではなく、その日のための"予習"です。
ただ、まったく縁がなかったわけでもありません。わが家の目標額は、この4%ルールから決めたものだからです。まずは、そのあたりから。
そもそも「出口戦略」って?
出口戦略とは、ひとことで言えば、貯めて増やした資産を、どう取り崩して使っていくかの計画のことです。
正直に言うと、私はこの言葉を、長いあいだ他人ごとのように聞いていました。まだ何十年も先の話だと思っていたからです。
積み立てる「入口」のほうは、そんなに難しくありませんでした。毎月決まった額を、自動でコツコツ。仕組みにしてしまえば、あとは淡々と続けるだけです。
実際、私がこの7年でやってきたことは、ほとんどそれだけでした。
ところが「出口」は、入口とは心理がまるで逆になるようです。
- 資産が減っていくのを見る恐怖
- あと何年、このお金が持つのか分からない不安
- 取り崩しを始めた途端、運悪く暴落が重なるかもしれない怖さ
積み立ては「増えていく」方向だから、多少の下落も「買い増しのチャンス」と思えます。でも取り崩しは「減っていく」方向。同じ下落でも、受け取る重さがまるで違うのだろうと想像しています。
だからこそ、出口は「なんとなく」で進めたくないと思いました。何か目安となる考え方がほしくなる。その代表として、よく登場するのが「4%ルール」です。私も、名前だけはずいぶん前から知っていました。
4%ルールとは? ざっくり言うと
4%ルールは、米国の研究から広まった、取り崩しの経験則です。
原典とされるのは、1994年に米国のファイナンシャル・プランナーウィリアム・ベンゲン氏が発表した研究。
その後1998年、トリニティ大学の研究者がまとめた論文(通称「トリニティ・スタディ」)によって、広く知られるようになりました。
考え方はとてもシンプル。
引退した年の資産の4%を、1年分の生活費として取り崩す。翌年以降は、物価の変化に合わせて少しずつ調整していく。
過去の米国のデータ(おおむね1926年以降)を見ると、株式と債券を組み合わせた資産でこのペースを守った場合、30年以上にわたって資産が枯れなかったケースが多かった。
そう報告されています。
これを裏返すと、もうひとつの有名な目安が見えてきます。
1年間の生活費の25倍を貯めれば、その4%(=1年分)で暮らしていける。(1 ÷ 0.04 = 25倍)
たとえば、ざっくりとしたイメージで言えばこうなります。
| 資産額 | 年に使える額(4%) | 月あたり |
|---|---|---|
| 2,000万円 | 80万円 | 約6.7万円 |
| 3,000万円 | 120万円 | 10万円 |
| 5,000万円 | 200万円 | 約16.7万円 |
数字にすると、ゴールが少しだけ具体的に見えてきます。「これだけあれば、毎月これくらいは取り崩せそうだ」と。私が最初にこの考え方に触れたときも、まさにその感覚でした。漠然としていた老後のお金が、はじめて手で触れる大きさになった気がしたのを覚えています。
ただし──ここが大事なのですが、4%ルールは「絶対に資産が減らない魔法」ではありません。なぜそう言えるのか、次で正直に見ておきます。
わが家の目標額は、この考え方から決めた
少し話が前後しますが、ここでひとつ書いておきたいことがあります。
わが家がサイドFIREの目標額を決められたのは、この4%ルールを知ったからです。
このブログの一番はじめの記事に書いたとおり、生活費のうち資産から補う分を先に決めて、それを25倍しました。順番としては、先に4%ルールがあって、そこから目標額が出てきたという形です。
それ以前の私は、「老後にいくら必要ですか」と聞かれても、まったく答えられませんでした。漠然と「たくさん」としか思えない。1億円と言われれば無理だと思うし、3,000万円と言われれば足りない気もする。基準がないから、判断のしようがなかったんです。
4%ルールのありがたかったところは、その基準をくれたことでした。使う額から逆算すればいいと分かるだけで、ゴールが数字になる。ぼんやりした不安が、届くかどうかを考えられる距離に変わりました。
ただ、この数字を絶対のものとは思っていません。次に書くとおり、4%ルールにはいくつもの前提があります。目標額のほうも、今後見直す可能性がある数字として置いています。
計算の中身は、シリーズ最終回であらためて書きます。ここでは、わが家の目標がこの考え方から出てきたということだけ、先にお伝えしておきます。
4%ルールを、そのまま信じてはいけない理由
便利な目安である一方で、4%ルールにはいくつもの前提があります。鵜呑みにせず、フェアに知っておきたいところです。
- 米国の過去データがベース。日本や全世界に投資した場合、同じ結果になるとは限りません。あくまで「アメリカの過去はこうだった」という話です。
- 資産配分や期間の前提がある。株式と債券を組み合わせた資産で、30年程度を想定した研究がもとになっています。前提が変われば、結論も変わります。
- 税金や手数料は別計算。NISAの外で取り崩せば、上場株式等の譲渡益には所得税・住民税などで約20%の税金がかかります。米国資産なら為替の影響も受けます。「4%まるごと手元に残る」わけではありません。
- 始めるタイミングで結果が大きく変わる。取り崩しを始めた直後に大きな暴落が来ると、資産の減りが早まって不利になります("順番のリスク"などと呼ばれます)。
- 過去の実績であって、未来の保証ではない。これがいちばん大事かもしれません。「こうだった」と「これからもこうなる」は、別の話です。
こうして並べてみると、4%ルールは「正解の数字」というより、「考えるための出発点」なんだと思えてきます。
私が引っかかったのは、最後のひとつです。「こうだった」と「これからもこうなる」は別の話。これは投資を続けてきた7年のあいだ、何度も感じてきたことでもありました。
いちばん怖いのは、始めた直後の暴落
前の節で挙げた「順番のリスク」。これだけは、他人ごとに思えませんでした。
暴落で売らなかった話にも書きましたが、2020年のコロナショックのとき、私は「やばい、このまま投資していていいのか」と思いました。積立をやめようか、本気で迷った時期です。
結局やめませんでしたが、正直に付け足しておくと、あのとき耐えられたのは、当時の積立額がまだ少なかったからでもあります。減った金額そのものが、いまほど大きくなかった。
そのうえで考えてみます。あれは積み立てている最中の暴落でした。買い続けている側だったから、「安く買える」と思い直すこともできた。
では、取り崩している最中に、同じことが起きたら。
- 資産は減る。しかも買い増しはしない
- そのうえで、生活費として引き出さなければいけない
- 減った資産から引き出すぶん、回復したときに乗る元本も減っている
積立期の下落は「待てば戻るかもしれない」で済みます。でも取り崩し期の下落は、待っているあいだも減り続ける。同じ暴落でも、立っている場所が違うと、こんなに意味が変わるのかと思いました。
積立期の下落ですら「やばい」と思った自分が、そのとき冷静でいられる自信は、正直ありません。 だからこそ、そのための備えを、いまのうちに用意しておきたいと考えています。
「定額」と「定率」、どちらで取り崩す?
もうひとつ、知っておくと景色が変わるのが、取り崩し方の2つのタイプです。
ひとつは、定額に近いやり方。原典の4%ルールは、「初年度に資産の4%、翌年以降は物価に合わせて同じくらいの額を取り崩す」という考え方でした。生活費が安定する反面、暴落のときも同じ額を引き出すので、資産が痩せやすい弱点があります。
もうひとつは、定率のやり方。毎年、「そのときの残高の4%」を取り崩します。暴落して資産が減った年は、引き出す額も自動的に減るので、資産の減り方を抑えやすい。そのかわり、年によって使える額が上下します。
私がいまのところ惹かれているのは、後者の「残高の◯%」という柔軟さのほうです。理由は、さっき書いた恐怖にそのままつながります。
暴落した年に、決まった額を引き出し続ける自分を想像すると、たぶん落ち着いていられません。「今年は少なくていい」と自動的に決まる仕組みのほうが、私の性格には合っている気がします。
生活費に多少の波は出ますが、資産を守りながら使う安心感のほうを、今は大事にしたいと考えています。
大切なのは、暴落の年に「使いすぎない」こと。そのための柔軟さは、持っておきたい。
もちろん、これも「今の考え」であって、実際にその局面に立てば、また感じ方は変わるかもしれません。
まだ出口前の私が、いまできること
正直なところ、出口戦略に「これが正解」という答えを、私はまだ持っていません。取り崩したこともないのですから、当然といえば当然です。
それでも、その日のための準備なら、今からでも始められます。私がいま意識していることを、4つ挙げておきます。どれも派手なことではありません。
ひとつ目は、現金のクッションを持っておくこと。
わが家はいま、生活費の6か月分を生活防衛資金として現金で分けています。ただ、これは働いているあいだの備えです。
取り崩す側に回るなら、それとは別に、暴落のときに株を売らずにしのげる現金がもう少しほしい。教育費を新NISAと現金の組み合わせで備えているのと、根っこは同じ発想です。
いくら必要かは、まだ決めていません。ただ、「株を売らずに待てる期間」を現金で買っておく、という考え方だけは持っておきたいと思っています。
ふたつ目は、「お金を受け取る」練習をしておくこと。サテライトで持っている高配当ETFの分配金が、それにあたります。
金額としては、生活が変わるようなものではありません。それでも、自分の口座に「資産から出てきたお金」が入るという感覚は、積立だけでは一生わからないものでした。取り崩しはまだ先でも、この感覚だけは先に持っておけます。
みっつ目は、売らない土台をつくっておくこと。2020年に積立を止めなかったこと、その後の下落でも同じようにしてきたこと。この繰り返しが、たぶんいちばんの準備になっています。出口で慌てないために、入口のうちから慣らしておく、というイメージです。
よっつ目は、取り崩しを「金額」ではなく「率」で考える癖をつけておくこと。
これは自分でも面白いと思ったのですが、私はいま、積み立てのほうは金額で決めています。毎月いくら、と決め打ちで。それが続けやすいからです。
でも取り崩すときは、たぶん逆のほうがいい。相場のいい年は少し多めに、悪い年は控えめに、と自然に調整できるからです。
入口と出口で、決め方まで裏返る。そう気づいてから、「いくら貯めるか」と同じくらい、「どう使っていくか」も今から意識しておきたいと思うようになりました。
4つ並べてみて思うのですが、どれも「出口が来てから考えること」ではありませんでした。いま積み立てている最中にしかできない準備ばかりです。そう気づけただけでも、今回調べてみた意味はあったと感じています。
出口は、いつか突然やってくる試験ではない。今から少しずつ、慣れておけるもの。
まとめ:4%は「目安」、正解は人それぞれ
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
最初の問いに、あらためて答えるなら── 4%ルールは、とても便利な"目安"です。ゴールの金額をイメージするのにも、取り崩しのペースを考えるのにも役立ちます。
でも、それは金科玉条ではありません。米国の過去データに、いくつもの前提がついた経験則。だからこそ、自分の状況に合わせて、柔軟に向き合っていくものだと思います。
私は、「率で柔軟に取り崩す」「現金のクッションを持つ」「相場が悪い年は使いすぎない」という構えで、その日に備えていくつもりです。まだ実践前なので、ここに書いたのは、あくまで今の時点での考えです。実際にその日が来たら、また見え方は変わっているかもしれません。
4%ルールは、わが家にゴールの数字をくれた考え方です。それは今も変わりません。ただ、その数字を絶対のものとして握りしめるのではなく、ときどき見直しながら付き合っていくものとして持っていたいと思っています。
大事なのは「いくら貯めるか」だけじゃない。「どう使い終えるか」まで含めて、お金の計画。
さて、ここまで「貯める→増やす→そして使う」と歩いてきました。出口の地図が、うっすら見えてきたところです。
そこで最後に残る問いは、いちばんシンプルなもの── じゃあ、わが家は結局いくら貯めればいいのか。
次回はいよいよ、わが家の必要資金を試算して、増やす力シリーズを締めくくります。
取り崩しはまだ先でも、「毎年いくらなら使えそうか」を一度ざっくり計算してみるのもおすすめです。4%ルールはあくまで目安ですが、出口を意識すると、いまの積立の意味が少し変わって見えてきます。
明日もまた、歩きながら考えます。
🚶 はいと
40代・4人家族のビジネスパーソン。
毎朝、歩きながらお金と人生のことを考えています。
※本記事は出口戦略に関する一般的な考え方を、私の現時点での見解としてまとめたものです。4%ルールは過去の海外データにもとづく経験則であり、将来の成果や資産の存続を保証するものではありません。税制・為替・相場環境によって結果は大きく異なります。最新かつ正確な情報は、各種公式情報や公的機関の発表でご確認ください。投資は元本割れのリスクを伴い、最終的な投資判断はご自身の責任でお願いします。
情報の出どころ
4%ルールは、もともと次の研究から広まった考え方です。どこから来た話なのかをはっきりさせておきたいので、一次情報に近い資料を中心に記しておきます。
- Bill Bengen|The 4% Rule ── ベンゲン氏本人による4%ルールの解説。1994年の研究と4.15%という初期取り崩し率の考え方に触れています。
- フィリップ・クーリー、カール・ハバード、ダニエル・ウォルツ「Retirement Savings: Choosing a Withdrawal Rate That Is Sustainable」(AAII Journal、1998年)── 通称「トリニティ・スタディ」。取り崩し率と株式・債券配分ごとの持続可能性を検証した研究です。
- 金融庁「NISA特設ウェブサイト」 ── NISA制度や非課税の取り扱いについて。
- 国税庁「株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」 ── 上場株式等の譲渡益にかかる税率の確認先。
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