暴落で売りたくなったとき、どうする? 何度も下落を越えてきた私が"売らなかった"理由

嵐のあとに雲が切れ、海辺の道に光が差し込む水彩風景
「資産が、みるみる減っていく」
「今のうちに売ってしまったほうがいいんじゃないか」

暴落のさなかに、そんな声が頭の中で大きくなる──。その気持ち、痛いほどわかります。私も、最初の暴落では同じことを考えました。この記事では、投資歴約7年の私が、何度もの下落を「売らずに」越えてこられた理由を、本音でお話しします。

前回の書評『投資の大原則』で、二人の巨匠がたどり着いた結論は「貯めて、分散して、低コストで、続ける」でした。

でも、いちばん難しいのは最後の「続ける」です。とくに、相場が暴落しているときに、です。

「では、その『続ける』を、暴落のさなかでどうやって守ればいいのか?」── 今日は、私自身の答え合わせをしてみます。


私が経験してきた暴落

旧つみたてNISAで積立を始めて間もない頃、いきなり大きな試練がやってきました。コロナショックです。

これが、私にとって初めての暴落でした。世界中の株価が一斉に崩れ、画面の数字がどんどん赤くなっていく。あの感覚は、今でも忘れられません。

その後も、相場は何度も大きく揺れました。

  • アメリカの景気後退(リセッション)懸念
  • 日銀の利上げ
  • 円高の進行

こうした要因が重なって、私は何度も下落局面を経験しています。保有資産の評価額が、短い期間で大きく下がることもありました。

約7年のあいだに、これだけの下落をくぐってきた。そう書くと我ながら、よく続けてこられたなと思います。


正直、コロナのときは「売りたい」と思った

格好をつけても仕方がないので、正直に書きます。初めての暴落だったコロナショックのとき、私は「売りたい」と思いました。

それまで順調に増えていた資産が、日に日に減っていく。「投資って、こんなに怖いものなのか」と、身をもって知った瞬間でした。

そのころの私は、どれだけ下がるのかが気になって、一日に何度も評価額をチェックしていました。見るたびにマイナスが膨らんでいて、そのたびに胃が痛くなる。「今のうちに売ったほうがいいのでは」── そんな声が、頭の中で何度も鳴っていました。

このまま淡々と続けていて、本当にいいのだろうか。あのときの私は、心のどこかでずっと不安を抱えていた気がします。


コロナのとき、私を踏みとどまらせたもの

では、なぜ私は、あの衝動に負けずにすんだのか。

いま振り返ると、当時の私に、立派な理屈があったわけではありません。むしろ支えてくれたのは、そのときの状況と、たまたま作っていた仕組みでした。

1積立額が小さく、暮らしを揺るがさなかった

いちばん大きかったのは、たぶんこれです。当時の私は、旧つみたてNISAで月33,333円を積み立てていただけでした。

もちろん、減っていく数字を見るのはつらい。それでも、その月の生活費が脅かされるような金額ではありませんでした。売らなくても、暮らしは回る。 いま思えば、少額から始めていたことが、最初の暴落を越える助けになっていました。

もし生活費を削ってまで大きな金額を投じていたら、きっと私も売っていたと思います。

2自動積立にしていて、手を動かさずに済んだ

もうひとつは、買い付けを自動積立で仕組み化していたことです。

毎月決まった日に、決まった額が自動で買われていく。私が「今月は買おうか、やめようか」と、いちいち決断する必要がない。

決断する場面が少なければ、迷う場面も減ります。仕組みに任せていたことが、感情から自分を遠ざけてくれました。

3結局、「何もしなかった」

そして、これが本当のところかもしれません。私は、売るための操作をしませんでした。

「売りたい」と思いながら、証券口座を開いて、売却ボタンを押すところまではいかなかった。決断できなかった、と言ったほうが正確かもしれません。

でも、投資においては、動かないことが最善の選択になる場面がある。あのときの私は、迷いながらも、結果的にそれを選んでいたのだと思います。


その後の暴落で、支えになったもの

コロナショックのあと、相場は何度も揺れました。そのたびに落ち着いていられるようになったのは、あの怖さを味わったあとに、少しずつ準備を重ねてきたからです。

4本を読んで、考え方を整えた

「相場が動くたびに動揺する自分を、なんとかしたい」── そう思って手に取ったのが、本でした。

『敗者のゲーム』『投資の大原則』をはじめ、長期投資の本を読むうちに、共通して書かれていることに気づきます。それは、相場が良いときも悪いときも、自分で決めた方針を淡々と続けることが大切、ということ。

暴落は、長く投資を続けていれば出くわすことがあるもの。それは「想定外の異常事態」ではなく「起こりうる出来事」なのだと、本が教えてくれました。

知識は、感情のブレーキになります。この学びがあったから、次の下落では、最初のときほど動揺せずにいられました。

5家計を整え、生活防衛資金を確保した

次に効いたのが、お金の面での余裕です。

「貯める力」で固定費を見直して家計に余白を作り、投資に回すお金とは別に、生活防衛資金を現金で確保しました。

積立額はその後だんだん増えていきましたが、土台を先に固めていたから、金額が大きくなっても怖さはむしろ減っていった。順番が逆だったら、続けられなかったと思います。

6コアを、全世界株に定めた

何を買うかがはっきりしたことも、大きな支えになりました。

資産の中心に置いたのは、全世界の株式に丸ごと分散したインデックスファンド、いわゆる「オルカン」です。

一つの国や一つの会社に賭けているわけではない。世界中の企業に、薄く広く分散している。だから短期の値動きに振り回されるより、長期的な回復と成長に期待しながら持ち続けたい── そう考えられるようになりました。

7「自分の航路を守る」と、先に決めた

そして最後に、「暴落が来ても、売らずに積み立てを続ける」と、あらかじめ決めておいたことです。

先に決めておけば、いざ暴落が来たときに、改めて判断を迫られなくて済みます。その場で「どうしよう」と考え始めると、恐怖に飲み込まれやすくなる。でも、ルールが決まっていれば、「決めたとおりにするだけ」になる。

考える余地を減らしておくことが、いちばん大きな防御でした。


今は、暴落とどう向き合っているか

こうした経験を重ねて、いまの私は、暴落とずいぶん落ち着いて付き合えるようになりました。

もちろん、資産が減るのは、いまでも正直に言えば残念です。そこは強がっても仕方がありません。

でも、そんなときは自分にこう言い聞かせています。「今はまだ資産形成のフェーズ。安く買える時期でもある」と。

積み立てを続けている最中なら、株価が下がる局面は、同じ金額でより多く買える時期でもあります。そう思えるようになってから、ずいぶん気持ちが軽くなりました。

評価額のチェックも、コロナのころのように一日に何度も見ることはなくなりました。いまは、相場の状況をときどき確認する程度に落ち着いています。


振り返って思うこと

こうして振り返ってみると、少なくとも私の場合は、あのとき売らずに持ち続けてよかったと思います。

何度も訪れた下落相場のあと、相場が回復する局面も経験しました。その後は円安と株価の上昇もあって、金融資産は結果的に増えてきました。

もしあのコロナショックで狼狽売りをしていたら、その後の回復局面を待てなかったかもしれません。

そして、いまの私は、下落相場を少し違う目で見られるようになりました。私が目指すSIDE FIREは、まだ何年も先の話。それまでは、積立を続けていくフェーズです。だとすれば、下落相場は「怖いだけの時間」ではなく、将来に向けて淡々と買い続ける時間でもあるのだと思っています。

同じ出来事でも、立っている場所が変われば、見え方はまるで違ってくる。それを教えてくれたのが、何度もの暴落でした。


まとめ:「売らない」と、先に決めておく

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

暴落で売らずにいられた理由を並べてきましたが、突き詰めると、たどり着くのはこの一言です。

暴落は、売るかどうかを決める場面ではなく、先に決めておいた航路を、ただ守る場面。

恐怖のさなかに落ち着いて判断するのは、誰にとっても難しいことです。だからこそ、相場が穏やかなうちに方針を決めておく。そして、本で学び、仕組みで支え、お金の余裕でクッションを作っておく。

私が何度もの暴落を越えてこられたのは、特別な才能があったからではありません。ただ、売らずにいられる準備を、少しずつ重ねていたから。それだけだと思います。

「とはいえ、含み損が膨らんでいくのを眺めるのは、やっぱりつらいよ」── 次回は、私が含み損とどう向き合ってきたか、そのメンタルの保ち方を、もう少し掘り下げてお話しします。

🌱 最後に、ひとつだけ

相場が穏やかないまのうちに、「暴落が来ても売らない」と紙に一行だけ書いておくのがおすすめです。あわせて、生活防衛資金がいくらあるかも確認しておく。恐怖のさなかに判断しなくて済むように、決めるのは"いま"のほうがずっと楽です。わが家も、その一行に何度も助けられました。

明日もまた、歩きながら考えます。


🚶 はいと
40代・4人家族のビジネスパーソン。
毎朝、歩きながらお金と人生のことを考えています。

※本記事は筆者自身の経験と考えをまとめたものです。投資は元本割れのリスクを伴います。最終的な投資判断はご自身の責任でお願いします。


情報の出どころ

  • バートン・マルキール、チャールズ・エリス『投資の大原則』日本経済新聞出版
  • チャールズ・エリス『敗者のゲーム』日本経済新聞出版
  • 金融庁|NISA特設ウェブサイト

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