勝とうとするから負ける?『敗者のゲーム』が教えてくれた投資の真実
「インデックス投資がいいって、よく聞く。でも、どうして?」
「プロが運用する投資信託のほうが、儲かるんじゃないの?」
もし、そんな疑問を持っているなら。その答えがまるごと詰まった一冊が、チャールズ・エリスの『敗者のゲーム』です。この記事では、7年間インデックス投資を続けてきたわが家が、この名著から学んだことを等身大でお伝えします。
増やす力シリーズの最初の書評は、私の投資観の土台になった一冊から始めます。
それが、チャールズ・エリスの『敗者のゲーム』。投資の世界では、長く読み継がれている古典的な名著です。
正直に言うと、私もこの本を読むまでは、「どうせ投資するなら、プロが選んでくれる投資信託のほうが儲かるんじゃないか」と思っていました。でも、この本は、その思い込みを静かに、でも確実に覆してくれました。
『敗者のゲーム』ってどんな本?
『敗者のゲーム』は、米国の投資コンサルタントであるチャールズ・エリスが書いた、投資の入門書であり、哲学書のような一冊です。初版は1985年。以来、何度も改訂を重ねながら、世界中で読み継がれてきました。
難しい数式や専門用語は、ほとんど出てきません。語られているのは、「個人投資家は、どう振る舞えば資産形成に成功できるのか」という、とてもシンプルで本質的なテーマです。
結論を先に言ってしまうと、エリスの答えは明快です。
市場に勝とうとせず、市場全体に低コストで投資し続けること。
つまり、インデックス投資こそが、多くの個人投資家にとっての最適解だ、という主張です。
タイトルの「敗者のゲーム」って、どういう意味?
この本のタイトル、最初は少し不思議に感じるかもしれません。「敗者のゲーム」とは、いったい何のことなのでしょうか。
テニスにたとえた、有名な話
エリスは、投資をテニスにたとえて説明します。これがとても分かりやすい。
プロのテニスは、「勝者のゲーム」です。鋭いショットや見事なプレーで、自ら点を取りに行く。勝つ人が、勝ちを掴み取る世界です。
一方、アマチュアのテニスは、「敗者のゲーム」だといいます。アマチュア同士の試合では、ミスをした側が失点する。つまり、ミスが少ない人が、結果的に勝つのです。
投資は、もう「敗者のゲーム」になっている
エリスは、こう続けます。かつて投資は、腕利きが勝ちを取りにいく「勝者のゲーム」だった。でも今は、プロの機関投資家が大半を占める世界になり、市場平均を上回り続けるのは、プロでさえ至難の業になった、と。
そんな世界で個人投資家が勝つには、どうすればいいか。答えは、ミスを減らすことです。
- 高い手数料を払いすぎない
- 値動きに動揺して、売り買いしすぎない
- 「今が買い時・売り時だ」とタイミングを当てようとしない
これらのミスを徹底的に避けること。そして、市場全体にそのまま乗っかること。それが、敗者のゲームでの「勝ち方」だというわけです。
私がこの本から学んだ3つのこと
7年間投資を続けてきた今、改めて読み返しても、学びの多い本です。なかでも、私の投資観を決定づけた3つのことをお伝えします。
1市場に勝ち続けるのは、プロでも難しい
一番の衝撃は、これでした。プロが運用するアクティブファンドの多くが、長期では市場平均(インデックス)に勝てていないという事実です。
「プロに任せれば安心」という私の思い込みは、ここで崩れました。高い手数料を払ってプロに任せても、市場平均に勝てないのなら、最初から市場平均そのものを買えばいい。とてもシンプルな結論でした。
2コストとタイミングが、最大の敵
リターンは、誰にもコントロールできません。でも、コスト(手数料)は、確実に発生するマイナスです。そして、売買のタイミングを当てようとする行為は、たいてい裏目に出る。
この本を読んで、私は「低コストの商品を選び、売買を最小限にする」ことの大切さを、腹の底から理解しました。わが家が信託報酬の低いインデックスファンドを選び、ほったらかしているのは、ここに理由があります。
3「何もしない」勇気こそ、最大の武器
投資をしていると、つい「何かしなきゃ」と思ってしまいます。下がれば売りたくなるし、上がれば追加で買いたくなる。
でもエリスは、「何もせず、ただ持ち続けること」の価値を繰り返し説きます。市場の短期的な上下に反応せず、淡々と保有し続ける。この「何もしない勇気」こそが、長期投資家にとって最大の武器なのだと、教えてくれました。
40代の私に、特に響いた理由
この本が、40代の私に特に響いたのには、理由があります。
ひとつは、時間を味方にできること。40代といっても、定年やその先まで考えれば、まだ20年以上の投資期間があります。長期で市場に居続けるほど、敗者のゲームの戦略は効いてきます。「40代からじゃ遅い」なんてことは、ありません。
もうひとつは、忙しい世代だからこそ合っていること。仕事に家庭にと、市場とにらめっこしている時間は、正直ありません。「勝とうとしない・何もしない」という戦略は、時間のない40代の会社員にこそ、ぴったりなのです。
この本は、わが家が続けてきた「全世界株インデックスを、低コストで、ほったらかす」というやり方に、しっかりとした裏付けを与えてくれました。
こんな人におすすめ
『敗者のゲーム』は、特にこんな方におすすめです。
- 投資を始めたいけれど、何を買えばいいか分からない人
- 個別株や短期売買に、疲れてしまった人
- 「インデックス投資がいい」と聞くけれど、その理由を腹落ちさせたい人
- 投資の心構え・哲学を、最初に身につけておきたい人
逆に、「明日上がる銘柄を知りたい」「短期で大きく儲けたい」という方には、物足りないかもしれません。この本が教えてくれるのは、地味だけれど、長く効く王道だからです。
まとめ:勝とうとしないことが、結局いちばん勝つ
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
『敗者のゲーム』が教えてくれたのは、逆説的な真実でした。
市場に勝とうとするから、負ける。勝とうとしないことが、結局いちばん勝つ。
派手さはありません。でも、この考え方を土台に持てたことで、私は値動きに一喜一憂せず、淡々と投資を続けてこられました。これから投資を始める方にこそ、一番最初に読んでほしい一冊です。
「では、その低コストなインデックス投資を、具体的にどの制度で始めればいいのか?」── 次回は、その器となる新NISAの仕組みを、やさしく整理していきます。
明日もまた、歩きながら考えます。
はいと
40代・4人家族のビジネスパーソン。
毎朝、歩きながらお金と人生のことを考えています。
※本記事は書籍の内容を、筆者なりの解釈でまとめたものです。投資は元本割れのリスクを伴います。最終的な投資判断はご自身の責任でお願いします。


