『マネーの公理』書評|インデックス投資家が学んだ3つのこと

天気が移り変わるチューリヒ湖を進む一隻の帆船
「投機の本なんて、自分には関係ない」
「コツコツ積み立てている人間が読んでも、意味がないんじゃないか」

はじめは、そう思っていました。それでも手に取ったのが、少し毛色の変わった一冊、『マネーの公理』です。これまで紹介してきたインデックス投資の名著とは、かなり違う哲学。それでも、淡々と積立を続ける身には、考えさせられるものがありました。投資歴約7年・40代のいま、この"逆張りの名著"から学んだことを、正直にお話しします。

前回までの暴落で売らなかった理由含み損との向き合い方では、「自分の航路を守る」という心構えを書いてきました。

今回はその締めくくりとして、まったく違う角度から投資のリスクを照らしてくれた一冊を紹介します。


『マネーの公理』ってどんな本?

『マネーの公理』(原題:The Zurich Axioms)は、スイスの投資家・投機家たちが受け継いできた、リスクと向き合うための知恵をまとめた本です。著者はマックス・ギュンター。

これまで私が紹介してきた『敗者のゲーム』『投資の大原則』が、「分散して、低コストで、長期で、淡々と」と説くのに対し、この本はある意味その

「お金をリスクにさらせ」「長期に根を下ろすな、何かが起きたら反応せよ」と語る、いわば投機の哲学です。

しかも本書は、長期計画だけでなく、長期投資そのものにも否定的。長期で持ち続けることを「将来を保証しない、幸運への賭け」と呼び、持っているものは数か月ごとに見直すべきだと説きます。毎月同じものを買い続けている自分とは、まっこうから反対の立場です。

冒頭から、何かを得ようとするなら、自分の資産や安心感をリスクにさらす場面がある、という趣旨が語られます。

リスクに立ち向かうための、奥深く、どこか神秘的な十二のルール。それが、本書の核となる「チューリッヒの公理」です。


印象に残った教え

読みながらとくに線を引いた教えを、自分なりに要約するとこんな内容でした。

  • お金をリスクにさらせ。心配がないなら、まだ十分に賭けていない
  • うまくいっているうちに、早すぎるくらいで利益を確定する
  • うまくいかないと分かったら、祈らずに早めに引く
  • 予言や相場予測を、信じ込みすぎない
  • 根を下ろすな。ひとつの対象に居ついてしまうと、動きが鈍る
  • 長期計画は、あてにならない。必要なのは、金持ちになろうとする意思だけ

正直に言えば、インデックス投資を淡々と続けている身からすると、「えっ、それは逆では?」と身構える教えばかりです。

心配するくらい賭けろ、うまくいっているうちに利食え、うまくいかないなら早めに引け、根を下ろすな、長期計画はあてにならない。それでも一つひとつ立ち止まってみると、受け取れるものは確かにありました。


インデックス投資家の私が、受け止めたこと

では、毎月コツコツ積立をしている私が、この逆張りの本から何を受け取ったのか。とくに響いた3つを書きます。

1自分が背負っているリスクを、見つめ直した

「お金をリスクにさらせ」──最初は、投機家のための言葉に聞こえたんです。でも、よく考えれば、インデックス投資もお金をリスクにさらしているのです。

全世界株(オルカン)は、世界中に広く分散されているとはいえ、価格が大きく下がることもあるリスク資産。つまり、私にとって"お金をリスクにさらす"行為は、まさにこのインデックス投資そのものなのだと、あらためて腹落ちしました。

しかも私は、コアを広く分散したオルカンにしながら、サテライトとして高配当ETFで、あえて狭い範囲に集中投資をしています。

そこでは、ほんの少しだけ多めにリスクを取っている。この本は、自分がいま、どれだけのリスクを、どんな形で背負っているのかを、冷静に見つめ直させてくれました。

2未来の相場は、誰にも読めない

「すべての予言は無視せよ」──これは、私の投資観とぴたりと重なりました。

誰も、未来の相場を正確には読めない。この前提を、本書はくり返し突きつけてきます。だからこそ私は、「相場が読めます」「利益が出ます」と言い切る情報からは、距離を置いたほうがいいと考えています。

未来が読めないという前提は、『敗者のゲーム』で学んだこととも同じ。逆張りの本のはずなのに、ここは私の「予測に振り回されず淡々と積み立てる」スタンスを、静かに補強してくれました。

3「長期計画は要らない」と言われて

そして、いちばん印象に残ったのが、十二番目の公理として語られていた考え方です。

お金に関して必要な長期計画は、「金持ちになろうとする意思」ただ一つ。それ以外の計画は、あてにならない。

ここが、いちばん引っかかりました。わが家には、目標額と毎月の積立額を決めた長期計画がある。それを「あてにならない」と言い切られたわけです。

計画を捨てる気には、なれませんでした。ただ、なぜ自分はサイドFIREを目指しているのか──その問いだけは、深く刺さりました。

答えは、いまならはっきり言えます。家族と自分が、より自由で、豊かで、幸せな人生を生きるため。 それだけです。

7,500万円という目標額も、毎月の積立も、そのための手段にすぎません。順番を間違えると、数字のほうが目的になってしまう。この本が突きつけてきたのは、たぶんそこでした。

計画の数字は、意思がなければただの数字です。手法やテクニックの前に、「自分はどうなりたいのか」がある。投機を語る本の、いちばん最後にこの話が置かれていたことが、強く印象に残りました。


それでも、私が手放さない「航路」

誤解のないように書いておくと、この本を読んで「よし、自分も短期で売買しよう」とは、まったく思いませんでした。

「長期に根を下ろすな、すぐ反応せよ」という教えは、少なくとも兼業の個人投資家がそのまま真似するものではないと感じました。同じことを表面だけなぞれば、高く買って安く売る動きになりかねない。暴落でも売らないと決めた私には、ここは合いません。

早めの利益確定や、数か月ごとの見直しも同じです。上がったら利食い、こまめに持ち替える。それができる人もいるのでしょうが、平日は仕事をしている身には、判断の回数が多すぎます。判断を減らすために積立を選んだのに、それでは逆戻りしてしまいます。

私がこの本から受け取ったのは、手法ではなく、その奥にある"心構え"のほうです。

  • リスクを、正しく意識すること
  • 予測を、信じすぎないこと
  • なりたい自分の意思を、まん中に置くこと

コアのインデックス投資は、これまで通り淡々と。サテライトで、ほんの少しだけリスクを取る。その全体像を、この本はくっきりと照らし直してくれました。逆張りの名著は、私の航路を否定するのではなく、別の光で確かめさせてくれたのです。


土台がある人ほど、効きます

長期の計画を、数字で持っている人。 わが家には目標額と、毎月の積立額があります。それを正面から「あてにならない」と言われる経験は、なかなかできません。計画を捨てはしませんでしたが、なぜ捨てないのかを、初めて言葉にできました。

コアだけでなく、サテライトも持っている人。 私はオルカンのわきに高配当ETFを少しだけ持っています。「お金をリスクにさらせ」という一文で、自分がいまどんな形でリスクを取っているのかを、あらためて数え直しました。

逆に、これから投資を始める方には、まだ早いと思います。まずインデックスの名著で土台を作ってからのほうがいい。反発するにも、足場が要ります。土台がなければ、私も丸ごと信じるか、丸ごと切り捨てるかのどちらかになっていたはずです。


まとめ:リスクを意識して、自分の航路を確かめる

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

『マネーの公理』が私に教えてくれたのは、逆張りの投機術そのものではなく、その奥にある3つの本質でした。

リターンを期待するなら、自分の資産をどんなリスクにさらしているのかを意識する。未来の相場は、誰にも正確には読めない。そして、計画の数字より先に、「なぜお金持ちになりたいのか」という意思がある。

正反対の哲学の本なのに、読み終えてみれば、私が淡々と続けてきたインデックス投資の意味を、いっそうはっきりと教えてくれた一冊でした。

次回からは、増やす力シリーズも「応用・出口」のステップへ。まずは、会社員に用意された老後資金の器、企業型DCの活かし方をお届けする予定です。

🌱 最後に、ひとつだけ

私はこの本の「長期計画はあてにならない」という一文に、強く引っかかりました。引っかかったからこそ、自分がなぜ計画を捨てないのかを、初めて言葉にできました。 全部に賛成できる本より、一か所でも反発できる本のほうが、自分の考えははっきりします。

明日もまた、歩きながら考えます。


はいと はいと
40代・4人家族のビジネスパーソン。
毎朝、歩きながらお金と人生のことを考えています。

※本記事は書籍の内容を、筆者なりの解釈でまとめたものです。投資は元本割れのリスクを伴います。最終的な投資判断はご自身の責任でお願いします。


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